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モスクワ第二国際空港(1999年9月 71歳)

 スクワの正式な国際空港は、市内の中心からバスで30分くらい離れたところにあります。ところが『モスクワ第二国際空港』は、驚いたことに赤の広場にあるのです。
 現地ガイドさんの説明によると、この第二国際空港とは、実に愉快な出来事があった場所で、今から約13年くらい前にドイツの小型機が、無許可でこの赤の広場の一隅に着陸したとのこと。
 そのことは日本でも前代未聞のユニークな事件として大々的に報道されたので記憶に残っています。その事件の全容は、ドイツの19歳になる青年が、単なる好奇心からセスナ機を運転して来て、無断で着陸したのです。
 時は厳戒の厳しい旧ソ連の時代です。この事件よりもわずか前の1983年8月11日、極東にあるサハリンの近海を、アンカレッジからソウルに向かった韓国の大型ジェット旅客機が、誤って領空を飛行したというだけでソ連の戦闘機に撃墜され、乗客・乗員のすべてが海底に墜落して死亡したという大事件がありました。
 この中には、韓国人や日本人の他に62名のアメリカ人もいたのです。それでも文句が言えなかった時代のことです。
 赤の広場は自由に行き来ができるので、常時多くの人々が歩いています。そのような場所に何故着陸できたのか、不思議に思ってガイドさんに尋ねてみました。
 「そのとき、赤の広場には誰もいなかったのですか?」と。「いいえ、セスナ機は歩行者がいなくなるまでクレムリンの上空を旋回して様子を伺い、着陸のチャンスを狙っていたようです」と………。
 特に警備の厳しいはずの政治の心臓部であるクレムリンの上空を、他国の飛行機が旋回していたのさえ警備の軍隊が誰ひとり気がつかなかったのも、信じられないほど油断があったことになるけれど、堂々と着陸した青年の度胸もたいしたものだと思います。
 当然のことながら国際法違反だし、場所が場所だけにその青年に対する処罰が気になります。ガイドさんに、「その青年は銃殺刑にでもなったのですか?」と尋ねたら「いいえ、2週間の取り調べを受けただけで、政治的な意図がなかったと分かり無罪放免されたようです。」との返事。
 良かったなぁーと、胸を撫で下ろした後で、すごく愉快な気分になりました。それにしても『モスクワ第二国際空港』とは、実にうがったユニークな名前を付けたものだと感心しました。

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